Art of Inspiration

Epilogue

ブランドリニューアルのエピローグ

すべてのはじまりは、20年ほど前のロンドンにあった。偶然、宝飾店に足を踏み入れたことから、物語の幕が上がる。 その店の名前は、「THE GREAT FROG」。あのエアロスミスやビートルズにも愛された、老舗ジュエリーメゾンだ。 当時の私にとっては未知のブランドであったが、そこには人を惹きつける強い何かがあった。

この出会いをきっかけにして、私はファッション業界に身を置くことになる。14年前、ロンドンを離れて日本に帰国。自身のブランドを立ち上げたのだが、ここでひとつの壁にぶち当たることとなった。

「上質の素材」「かっこいいもの」「売れるもの」にこだわってジュエリー製作をはじめたものの、思うようにいかない。言い訳ばかりの日々を過ごしていたとき、「大切なことは、どんな思いで製作するか、何を伝えたいのか突き詰めること」だという先輩の言葉に、ロンドン時代を思い出してはっとした。

ロンドン時代、趣味でジュエリー製作していたころ、たくさんの人に作品をプレゼントしていた。その中でも忘れられないものがふたつある。

ひとつは、日本のみならず、世界的にも活躍していたサッカー選手に贈った指輪。過酷なレギュラー争いを続ける彼のため、少しでも力になれたらと、「UNDEFEATED(何事にも打ち勝つ)」の文字を入れてプレゼントした。

そしてもうひとつは、当時仲がよかった女性に贈ったブレスレット。彼女のことを思い、心を込めてデザインした作品はとても喜んでもらえた。お相手は、後に私の妻となった人だ。

その指輪にも、ブレスレットにも、相手のことを心に描き、あふれる思いを込めていたのに。そんなことも忘れてしまっていた自分に気がついた。その瞬間が、ほんとうの意味でのスタートライン。

「小細工でごまかすような方法論とはさよならだ。伝えたいことがあるのなら、臆することなく堂々と向き合えばいい。ジュエリーにはきっとその力がある」。もう迷いは必要ない。真正面からひとつの信念を貫き通せば、必ずやその思いは伝わるであろうと。確かな思いを胸に、動きはじめた。

そこから10年、一つひとつの作品に思いを込めながら、ブランドの核となるものを築きあげてきた。そして今、また新たなステージに進むとき。

人の心に触れ、絆を紡ぐことができるジュエリーを。何世代にも受け継がれ、愛されるジュエリーを。気持ちも新たに、背筋を伸ばして一歩を踏み出す。さあ、新たな物語の幕開けだ。